くだらない酒 「くだらない」という言葉は、「つまらない」「ばかばかしい」とか「愚にもつかない」「最低」といった意味でよく使われる日常語ですが、この「くだらない」という語源が酒に関係があることは案外知られていないようです。
 今は東京へ行くことを「上り」といいますが、江戸時代は反対でした。都が京にあったためであることぐらいは、だれでもご存知のことです。
 当時の江戸では良質の酒は造られていなかったため、主に灘の銘酒が最高級品としてもてはやされたようです。灘の酒は京都を通って江戸へと運ばれていったために「くだり酒」ということになります。各地の地酒も、江戸へ「下っていく酒」と江戸に行かない酒とに分かれました。
 こうして江戸へも運ばれない酒のことを「くだらない酒」と言うようになり、悪い酒の代名詞となって
現在私たちが日常使っている「くだらない」となったのです。

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酒飲みは上戸の左利き  お酒が大好きな人のことを左利きとか左党などといいますが、これは、金山の業界用語だったという説もあります。金山を掘るのには右手に槌を持ち、左手のノミを持って作業をする、つまり、ノミ手の左手と飲み手をひっかけたというわけです。日光東照宮の眠り猫などの作者として有名な左甚五郎も、左手のノミ手を巧みに使う名匠だったこともあって、飲み手=左の印象が強まったようです。
 また、お酒が大好きな人のことを上戸、飲めない人を下戸と呼ぶのは、大宝律令からきた言葉。大宝律令制度では一戸にいる成人の数で大戸、上戸、中戸、下戸と分け、成人が多い上戸のほうが、下戸より裕福で酒の量も多かったことによるとか・・・

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日本酒造りに使う米
     〜酒造好適米〜
 どんな米でも一応お酒をつくることができます。しかし、より酒がつくりやすいように品種改良したのを酒米といい、酒米の中でも特にその品種と産地について農水省の指定を受けたものを酒造好適米と呼んでいます。好適米の産地は現在27府県、品種は28銘柄あります。その中で最も多く使われているのが「五百万石」、「山田錦」、「美山錦」の3銘柄で、酒造好適米の約80%を占めています。
 好適米としての特性は1、大粒である 2、心白(米粒の中央部分、白く半透明に見えるもの)があること 3、タンパク質の含有量が少ないことなどがあげられます。
 大粒かどうかは千粒重(せんりゅうじゅう)ではかります。千粒重とは整粒米1000粒の重量です。私たちがご飯で食べるコシヒカリやヒトメボレの千粒重は22g前後、山田錦や雄町は26〜28g、五百万石や美山錦は24〜26gです。大粒だと高精白によく耐え、米の芯の部分の純粋デンプン質部分をお酒にすることができます。
 また、心白は細胞組織が柔らかいものです。したがって、麹菌の菌糸が中によく入り込み、それだけ酒化率が高くなります。タンパク質の多少はお酒の味に関係します。多いと雑実が出やすいので、含有量は少ないほうがいいのです。
 酒造好適米ではありませんが、酒造りに利用され、それなりの効果をあげている米も少なくありません。新潟や山形県の「亀の尾」、福島県の「京の華」、茨城県の「渡船」、香川県の「オオセト」、愛媛県の「松山三井」などで、有名好適米に右へならいすることなく、その土地の米でその地の酒であってほしいものです。

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ビールの栓  ワインの栓はコルク。ウイスキーの栓も昔はコルクでしたが、最近はアルミのスクリュー栓がほとんどです。ブランデーもコルク栓が使われています。
 酒瓶に使われている栓はほとんどがコルク栓でしたが、ビールだけは別物です。発泡性だからかと思うと、シャンパンはコルク栓ですからそういうわけではありません。
 栓にもいろいろあって面白いものです。ビール瓶の栓はギザギザのついた王冠で締められています。このギザギザの数は世界中の全メーカーが同一の21個です。この数よりギザギザが少ないと王冠はすぐにはずれてしまう。また、多いと逆に栓がなかなか抜きにくいそうです。
 これを発明したのはアメリカのウイリアム・ペインターという人です。世に出たのは1892年のことです。それまではシャンパンのようなコルク栓で、抜けないようにひもで縛ってあったそうです。

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酒と「おかみさん」  弥生時代のお酒の造り方は、炊いたお米を口で噛んで造る、噛み酒だといわれています。口で噛む役目は、若い女性(あるいは主婦)が選ばれていました。つまり、酒造りのルーツをたどっていくと、主役は女性であったことがわかります。
 古代の「母長家族制」のもとでは、一家の長は女性であり、子育てをはじめ、食料の管理、配分、祭りの日の酒造りのどはすべて女性の役目で、今よりもはるかに重要な役目を果たしていました。だから結婚も男が妻の家に通うという形をとっていたのでしょう。
 酒を造る現場監督の人を「杜氏」(とうじ)といいますが、この杜氏という言葉も、実は刀自(とじ)という言葉からきているそうです。刀自とは老母、主婦、年長けた婦人という意味で、やはり女性の意味です。「おかみさん」という意味は、「女将さん」と書きますが、その語源には「噛み」という言葉が潜んでいます。
 美味しいお酒を造る女性を尊敬して「おかみさん」と慕い、またお酒の配分にあずかろうという男の気持ちが、この言葉には込められているようです。

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お酒を飲むとなぜ顔が
赤くなるのか?
 アルコールは体内に入ると、20%が胃で吸収され、80%が腸から吸収されます。血液に吸収されたアルコール分は人にさまざまな作用を及ぼします。
 顔が赤くなるのを医学用語でフラッシングといいます。フラッシングをおこす第一の原因は、アルコールには熱量があり、その熱量に応じて体が熱くなるからだそうです。ステーキを食べても体が熱くなるのと同じ理屈だそうです。
 もうひとつは、アルコールを分解する酵素が弱い人がいます。
 アルコールが分解される過程を単純にいうと、《アルコール→アセトアルデヒド→酢酸→水・炭酸ガス》と順調に分解されれば問題はありません。
 ところが、アセトアルデヒドがなかなか分解されないで体に溜まると、その薬利作用で、頭部に血管拡充を起こします。これが、顔が赤くなる原因です。
 では、アセトアルデヒドを酢酸に分解する酵素は何かというと、難しいですがALDHという酵素で、アセトアルデヒドをさっさと分解するタイプと、なかなか分解してくれないタイプがあります。日本人は分解しにくいタイプの酵素をもった人が多いので、酒に弱く、顔が赤くなりやすいというわけです。なかには例外の人もいますけど・・・

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日本酒の意外な使いみち 日本酒に美顔効果があることをご存知でしょうか?すでに酒造メーカーでは、精米後に出る米糠をベースに洗顔石鹸や化粧水をつくり販売しています。値段が手ごろで使いごこちもいいと評判は上々のようです。今まで廃棄処分にしていた大量の米糠を再利用することができ、まさに一石二鳥というわけです。
 自家製の日本酒ローションをつくっている人もいます。つくり方は簡単です。日本酒一升に対してレモン5個を丸のまま漬け込んで密封し、3ヶ月ほど放置しておくだけです。使っていると、すべすべのお肌になるそうです。
 松材の家具のツヤ出しにも効果を発揮します。酒をしみこませた布で表面を拭くだけです。同様に酒をしみこませた布で爪の表面を磨くとつやが出ます。
 酒風呂健康法ともいうべき入浴法もあります。少しぬるめのお湯をはった湯船に、600〜800mlの日本酒を入れて、ゆっくりとつかる。体を温めて血行を促進するため、心臓病、肝臓病そして皮膚病、冷え性、不妊にも効果があるそうです。肩こりや筋肉痛には、まず日本酒を患部にぬり、マッサージをしてから入浴すれば、さらに効果的です。打ち身、捻挫の場合は、トチの実をこまかく砕いて、日本酒に漬け込んだものをすりこんでマッサージをするそうです。 また、しもやけにはグリセリンと日本酒をぬると血行がよくなります。
 「酒は百薬の長」といわれますが、飲みすぎは体をこわすもとにもなります。
しかし、酒風呂や洗顔、化粧水として、さらに、血行促進のぬり薬として活用すれば、健康面の活躍の場はさらに広がります。しまいこんであるお酒を眠らせておくてはありません。

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上戸・下戸  人工衛星から肉眼で見える地球上ただ一つの人工建造物―「万里の長城」。いわずと知れた秦の始皇帝が強大な権力でもって北方の外敵を防ぐために造ったものです。この長城に当時番兵が昼夜を分かたず立ち続けたそうです。この番兵は上に立つものと下の入り口を守るものと二手に分かれていました。なにしろ寒いところです。下の門番はまだしも上の門番はたまったものではありません。暖を取るにも寒風吹きさらしではどうにもなりません。そこで、城壁の上に立つ者にはお酒が支給され、お酒によって暖を取るようにしたそうです。
 下のものたちは城壁の中でのことでお酒は支給されませんでした。こうしたことからお酒に強い者は上の番兵、反対に弱い連中は下の番兵ということになり、下の門番が下の戸を守る者、すなわち下戸番、上の番兵を上の戸を守る者、上戸番と呼ばれるようになりました。そうしたことから、今では酒飲みのことを上戸、弱い人や飲めない人を下戸というようになったそうです。

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乾杯  現在では宴会は乾杯からスタートするのが当たり前。この乾杯にも面白い話があります。なぜ乾杯が行われるようになったか・・・
 中世ヨーロッパに始まった習慣という説もありますが、中国ではもっと古くからこの乾杯が行われていたようです。昔の皇帝とか王侯の激しい勢力争いは、相手をどうして倒すかという、いわば暗殺の繰り返しでもありました。当然、毒殺が盛んに行われたことはいうまでもありません。そこで暗殺防止のために、「この酒には毒が入っていません。安心してお飲みください」という意味から、お互いのグラスに同じお酒を注いで、グラスを合わせたのが始まりといわれています。親睦とか友情とか、お互いの繁栄といった意味で行われる現在の乾杯にもこんな歴史が秘められています。

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ソルティ・ドッグ  ソルティ・ドッグはなかなか人気のあるカクテルですから、ご存じの人も多いと思います。タンブラーの口にレモンの切り口を当てて回して湿らせ、塩を広げた皿の上に伏せて塩をつけます。いわゆるスノースタイルにしたグラスに氷を入れてウオッカを注ぎ、グレープフルーツ・ジュースで満たして軽くステアして出来上がりです。簡単なカクテルですからどこでも作れると思います。
 このソルティ・ドッグという言葉は、イギリスで船の甲板員のことをいうスラング。彼らはいつも波のしぶきを浴びて働いているから体に塩気を帯びており、「ショッパイやつら」と呼ばれていました。
 最初、イギリスではジンをベースにしてつくられていましたが、アメリカに渡ってからいつの間にかウオッカをベースにつくられるようになりました。アメリカではソルティ・ドッグというのはプレーボーイという意味にも使われるということです。

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